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ビルケンシュトックを長くご愛用頂くために、ソールをはじめ消耗したパーツのリペアに加え、この春から新たなサービスとしてライナーのクリーニングが始まりました。裸足で履くとできてしまう黒ずみ。お客様も気にされることの多いこの汚れをきれいにし、新品の履き心地へ。このクリーニングについて、リペアファクトリーのスタッフ・早乙女大祐に話を聞きました。
Photo : takuya nagamine、Interview : katsuhiko sugimoto

Profile

早乙女大祐 saotome daisuke

靴の専門学校に在学中、友人の影響で靴修理に興味を持ち、2016年にベネクシーリペアファクトリーに入社。“少しでも長く、美しい状態で履いて頂く事”をモットーに、日々お客様の大切な一足の修理に励んでいる。一方で日本全国直営店舗を巡りながら靴を磨くシューケアイベントを実施し、お手入れの方法を広める活動を行っている。

お客様の声に応えたライナー・クリーニング

――ソールの張り替えやパーツ交換といったリペアに加え、この春からリペア工房のサービスとしてライナー・クリーニングが始まりました。具体的にはどのようなクリーニングでしょうか?

ビルケンシュトックのフットベッドの表面(ライナー)は、高品質なスエード素材でできていますが、素足で長らく履いているとライナーに足の形を写したような黒ずみが生じます。これは履いている時にかいた汗や足の皮脂がライナーに染み込むからなんです。この黒ずみを解消するのが今回のライナー・クリーニングサービスです。 その工程は、天然素材由来のクリーナーを使用し、この黒ずみを浮き上がらせ洗浄。その後、抗菌剤をスプレーし、足の匂いの原因にもなるバクテリアの繁殖や汗によって生じるカビを抑えます。最後に丁寧にブラッシングすることで、ライナーのスエードを柔らかな触り心地へと整えます。 足の裏は1日にコップ1杯分もの汗をかくと言われています。フットベッドはライナーにスエード素材を使用することで、汗を吸う仕組みで作られているので、この黒ずみができるのは、きちんとフットベッドが機能している証でもあります。もちろん汗の吸収量には限界もあるので、このクリーニングで機能を正常に戻すことにもなります。

クリーニング前のライナーには、黒い足型がうっすらと。

水で希釈したクリーナーをつけ、洗浄。ライナーについた黒ずみを浮かび上がらせます。

洗浄後は水気を拭き取り、乾燥後にブラッシングで黒ずみを落としていきます。

ブラッシング後は新品のときのようなスエードの質感が。さらに細かく磨き整えていきます。

――愛用者には見覚えのある足の跡だと思いますが、クリーニング後の仕上がりはスエード特有の質感が戻っていてビックリしました。今回クリーニングを導入されたきっかけは?

リペア工房では、2015年から店舗をまわりお客様のシューズをお手入れする「シューケアイベント」を行っています。店頭でお客様と話をすると、ライナーの黒ずみについて質問されることが多かったんです。お客様が悩まれていると知り、その解決方法を探し始めたことがこのサービスのきっかけです。 私たちも初めての経験で、ゼロからのスタートでしたので、通常のリペア作業の合間を縫って研究を重ね、試行錯誤を経て、ようやく導入に至りました。リペア後に廃棄するフットベッドがあるのですが、それを全部実験に使いましたね(笑)。その後は、ショップスタッフのサンダルを借りて試し、その感想をもとに品質を向上させていきました。

――数を数えきれないほど試されたようですし、笑いあり、涙ありの研究だったと思いますが、研究中はどのような点が難しかったでしょうか?

研究中は苦労の涙の方が多かったですね(笑)。黒ずみを落とすのも、新品と同じようなスエードの肌触りを復活させることも大変でしたが、使う道具やブラッシングの時間などを細かく調整することで、ようやく答えにたどり着きました。研究段階から課題にしていたのはスピードです。サンダルは履いて頂くシーズンが限られているので長時間お待たせはできません。今は1週間以内でお戻しできるように目指しています。あと、苦労したのは、フットベッドにプリントされているビルケンシュトックのロゴをきれいに残すこと(笑)。クリーニングの際にロゴが消えてしまわないように工夫しました。

長く履いて頂くために、ご自宅でもケアを

――黒ずみが生じるタイミングは個人差があると思いますが、フットベッドに関する日々のケアなどでおすすめはありますか?

汗を吸収しますので、保管状況などによってはカビが発生する恐れがあります。定期的に抗菌剤をスプレーなどして頂くのがおすすめですし、履いた後に風通しのよい場所で陰干しして頂くと、汗も乾かすことができます。 店頭にはリペアファクトリーで使用するのクリーナーも販売されています。衣類やキッチンなどでも使える便利なクリーナーですが、これを使用すればご自宅でもライナーの汚れを落とすことができます。セットにもなっている同社の防水スプレー「プロテクター」も撥水効果が非常に高いので、ビルケンシュトックのスエードやレザーのアッパー部分にお試し頂きたいですね。ショップスタッフにお問い合わせ頂き、ご自宅で落とすのが難しい汚れなどに関しては、ぜひクリーニングに出して頂ければ新品のような状態でお戻しいたします。

――このところ夏日も多く、サンダルを履きたいという気分も高まっている時期だと思います。しまっていたサンダルを久しぶりに出してみたら、黒ずみが気になるという方もいらっしゃるかもしれません。

そうですね。今年の夏に履かれるサンダルであれば、クリーニングも5月から6月頃に出して頂くのがよいと思います。それで夏を通して履かれた後、また黒ずみが気になるようでしたらクリーニングに出して頂くと、次のシーズンまでカビの心配などもなくなります。ビルケンシュトックを長く愛用頂くために、このクリーニングを通じてシューケアについて知って頂けると嬉しいですし、その他にも様々なリペアを行っていますので、ぜひ店頭でご相談ください。

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